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明るい夜間戦闘

第二次世界大戦のヨーロッパ上空で繰り広げられたドイツとイギリス、アメリカの知られざる夜間戦闘の歴史や航空機、技術の紹介しています。

暴かれたリヒテンシュタイン

1942年後半から「敵は前方2kmにいる。エーミール・エーミールで分かるか?」と、こんな無線通話がストレートにイギリス本土の電波傍受基地に頻繁に入るようになりました。あきらかにドイツ夜間戦闘機と地上との交信でした。
「エーミール・エーミール」の言葉が出た後、すぐに周波数490Mhzの電波が受信できました。いつも決まって流れる490Mhzの電波を、イギリス空軍はドイツ夜間戦闘機が持つ機上搭載レーダーの周波数だと考え(もちろん別の装置から出される電波の可能性もありましたが)、実際に夜間戦闘機に追われて確かめようということになりました。

1942年12月の初め、490Mhzに感応する受信機を積んだ「ウェリントン」がドイツ夜間戦闘機の哨戒空域を飛び、すぐにJu 88Cに取り付かれました。搭乗員6名のうち4名が重傷を負い機は撃墜されて不時着しましたが、受信機は追撃される間、Ju 88から出される電波に感応し続けました。
イギリス空軍は命がけの実験と引き換えに、FuG 202 リヒテンシュタイン B/C、FuG 212 リヒテンシュタイン C-1の周波数を手に入れたのでした。

すぐにイギリス空軍は490Mhzの電波に探知する対「リヒテンシュタイン」用の電波探知装置「ブーザー」を作りました。またすでにデータを入手済みだった地上邀撃レーダー「ヴュルツブルグ」の560Mhzの周波数と近いため、「ブーザー」は両レーダーを捕捉できました。
そしてもう一つ、機体後部から頂角45°の円錐状の電波を発して、「リヒテンシュタイン」の電波を取られる「モニカ」も作られました。

1943年の春から「ブーザー」と「モニカ」は英爆撃機に装備されましたが、ドイツ夜間戦闘機と地上砲火に追われていることがわかるだけでは効果は知れていました。
毎度5%を越えるイギリス爆撃兵団の損失を抑えるためには、レーダーそのものを無力化してしまうほかはありませんでした。

1943年5月9日の夜、第3夜間航空団第11中隊(11./NJG 3)所属のJu 88R-1が地上からの誘導無線通話を受けて基地に向かいました。夜間の着陸を無事に終え、タキンシングで管制塔のそばに止まり搭乗員らが機体から降りると、彼が目にしたのはイギリス空軍の将兵たちでした。
イギリス空軍はドイツ軍の無線に波長を合わせるとドイツ語の流暢な隊員に誘導させ、ダイス基地 (現アバディーン飛行場)へ着陸させたのでした(搭乗員たちが意識的にイギリスに投降したという説もある)。
こうしてイギリス空軍はまったく無傷のままFuG 212 リヒテンシュタイン C-1を装備した夜間戦闘機を手に入れたのでした。
さっそくJu 88R-1をファーンバラ基地へ運び、地上と空中とでFuG 212 リヒテンシュタイン C-1の徹底的な調査を行いました。
調査の結果FuG 212 リヒテンシュタイン C-1は覆域範囲も狭く、すでにイギリス空軍で旧式化しつつあったAI IV型機上搭載レーダーよりも性能が劣る事がわかりました。さらに使用を迷っていた紙の両面にアルミ箔を張った「ウィンドウ」をまくと、確実に反応して目標を捕らえられなくなることも実証できました。

P-61の機首に搭載されたACR-7201942年にマイクロ波使用の機上搭載レーダーAI VIII型の配備を開始できるところまでごぎつけ、「ウィンドウ」と目標を確実に見分けるAI IX型を完成していました。また、アメリカ軍もアルミ箔などの金属片では妨害を一切うけない機上搭載レーダーACR-720の開発に成功していました。地上用レーダーも同様に、この種の妨害に耐えられるタイプIIを、一定数そろえるまでになっていました。

ウィンドウ」の妨害を受けなければ、仮にドイツ軍が「ウィンドウ」で報復してきても困る事はありません。そして1943年7月にイギリス空軍はついに「ウィンドウ」の使用に踏み切り、爆撃目標をドイツ第二の都市ハンブルクに決定しました。

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メタデータ:

投稿者:IMAGEDRIVE
公開日時:2009年6月23日 00:00 更新日時:2009年6月28日 23:02
URL:http://www.nachtjagd.org/history/1943/1943_09.shtml

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